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2024年に米国より、気管支拡張症の原因遺伝子としてWFDC2遺伝子変異が報告されました。
複十字病院からは本邦で初のWFDC2遺伝子変異による気管支拡張症3例を報告しています。
WFDC2遺伝子変異による気管支拡張症は常染色体潜性遺伝性疾患です。
PCDと比較すると頻度は低いですが、幼少期からの副鼻腔炎を有する若年の気管支拡張症患者においては鑑別にあげる必要があります。
胸部CT写真ではCFと同様に上葉優位の気管支拡張を認めます。
このような画像所見を認めた際には、CFやWFDC2遺伝子変異による気管支拡張症を疑う必要があります。
鼻腔一酸化窒素もPCDと同様に低下することが知られています。
血中のWFDC2(HE4)は卵巣癌の腫瘍マーカーとして外注検査が可能です。
WFDC2遺伝子変異による気管支拡張症では、血中のWFDC2は低下するため、外注検査では測定感度以下になると予想されます。
肺移植を要する症例や死亡例が報告されておりますので、早期診断・早期介入が必要です。
疑わしい患者さんがいましたら、専門施設への紹介をご検討ください。
次回は8月15日(金)18時00分~になります。
複十字病院の理学療法士より、「肺NTM症/気管支拡張症の呼吸リハビリテーション」についてお話していただきます。
各施設の理学療法士さんを是非お誘いください。
肺非結核性抗酸菌症および気管支拡張症において、気道クリアランス療法は非常に大切な治療になります。
気道クリアランス療法の方法としては、Active cycle of breathing techniques(自己排痰法)、エアロビカ®などの振動呼気陽圧療法器具(OPEP)、高張食塩水吸入などがあります。
しかし、ACBTを適切に指導できる理学療法士が不足しており、本邦でもまだまだ普及していない現状です。
院内でエアロビカ®を購入できる施設も少ないのではないでしょうか。
自己排痰法の方法については、You tubeで見ることができますので、是非患者さんにもご案内ください。
NTM-JRCの主催で、毎年オンライン上で市民公開講座が開催されております。
これまでの第1-5回の内容もYou tubeで見ることができますので、NTMや気管支拡張症の患者様にご案内ください。
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
まだまだ治療選択肢の少ない気管支拡張症においては、Treatable traitsを意識した診療が重要になってきます。
これまで気管支拡張症のTreatable traitsについては、複数の論文報告がされています。
Precision medicine in bronchiectasis - PubMed
今回、私たちが複十字病院で作成した気管支拡張症のTreatable traitsを紹介いたします。
よろしければ、日常診療の参考にしてみてください。
Treatable traits_V11.pdf (1.35MB)