お知らせ
日経メディカルのCOVER STORY of the Weekで、気管支拡張症が特集されております。
●気管支拡張症の原因の特定
「気管支拡張症診療は原因疾患の同定が治療の鍵」、診断済みのケースこそ精査が必要:日経メディカル
●気管支拡張症の治療
新薬登場が近い気管支拡張症、投薬の前に介入すべきことは:日経メディカル
●ガイドラインの解説
8つのPICOが欧州のGLで公開、日本の気管支拡張症診療はこう変わる!:日経メディカル
「マクロライド耐性MACって予後悪いっていうけど、手術してもやっぱり予後悪いでしょうね?」
と思っている方も少なくないと思います。
今回、名古屋の多施設共同研究で、マクロライド耐性(MR-MAC)と感受性MACに対する肺切除術後長期成績を比較したリアルワールドのデータが発表されたのでご紹介します。
本研究は、マクロライド耐性(MR-MAC)と感受性MACに対する肺切除術の治療成績を比較した多施設後ろ向き研究である。
対象
名古屋市内4施設において、2007~2024年に肺切除術を施行されたMAC症248例。
内訳はMR-MAC 34例、非耐性MAC(non-MR-MAC)214例。
治療内容
化学療法:術前3か月以上、3剤併用療法。必要に応じてアミノグリコシドを追加(2019年まではKM、以降はAMK)。
手術適応:原則としてDR分類Ⅱ以上。
手術非適応:化学療法中に急速進行を示す症例。
手術方法:区域切除以上の解剖学的肺切除。
治療内容の比較
MR-MAC群では、non-MR-MAC群と比べて以下が有意に多かった。
両側手術:38.2% vs 14.5%
切除区域数:3.5区域 vs 2.5区域
AMK使用率:82.4% vs 29.4%
治療成績
追跡期間中央値62.4か月における無増悪生存率(RFS)は、
MR-MAC:85.37% vs non-MR-MAC: 67.87%
であり、両群間に有意差は認めなかった(p=0.47)。
RFSに影響する因子
多変量解析では、
高齢とアミノグリコシド非使用
がRFS不良因子であった。一方、マクロライド耐性はRFSと関連しなかった。
さらに、IPTWを用いた傾向スコア補正後のCox回帰解析においても、マクロライド耐性はRFSに影響しなかった。
結論
マクロライド耐性の有無に関わらず、アミノグリコシド併用化学療法と肺切除術の組み合わせは、限局性で破壊性のMAC病変に対して長期的な病勢コントロールが可能な有効な治療戦略である。手術適応があると判断された症例では、マクロライド耐性にとらわれず、早期に外科治療を検討することが重要である。
コメント
本研究は、200例を超えるMAC手術症例を解析したこれまでに例のない規模のデータであり、そのインパクトは非常に大きいと考えます。MR-MACに対する手術+アミノグリコシドの重要性を再認識させられます。
Discussionでも述べられているように、「手術対象となる気道破壊性病変は、薬剤が十分に到達しにくい肺である」ため、薬剤耐性の有無以上に、どの病変を、どこまで切除するかという外科的判断が治療成績を左右するという点は、臨床的に極めて重要な示唆です。
肺MAC症に対する手術の時期、切除範囲、アプローチ方法、ならびに周術期治療の最適化は、専門の呼吸器外科医でなければ総合的な判断が困難な領域です。本論文の共著者である大同病院・山田勝雄先生と学会で議論した際にも、初期には内科的に手術非適応と判断されたものの、治療経過中にCAM耐性を呈して外科紹介となり、外科的再評価の結果、両側病変の完全切除によりbiological cureを得られた症例は決して少なくないことが共有されました(論文中に画像提示されている症例が代表的なものです)。
このような経験から、専門外科の立場としては、内科治療のみで改善が得られない場合には、早期の段階で一度専門外科にコンサルトし、手術適応について再評価していただくことが、患者さんにとって最良の選択肢につながる可能性があると考えています。
一方で、RFS曲線が術後早期に約80%まで低下している点は注目すべき課題です。これは、粗大病変は切除できても結節や微小な気管支拡張病変に遺残した菌の再燃が一定数含まれている可能性を示唆します。今後は、こうした微小遺残病変に対する術後補助化学療法(NTMの肺切除術がそもそもadjunctive therapyなので、consolidative therapy after adjunctive lung resectionとでも言いましょうか)の確立が重要な課題と言えるでしょう。
