お知らせ
線毛機能不全症候群(Primary ciliary dyskinesia:PCD)を疑うための問診としては、PICADAR scoreが知られています。
PICADAR: a diagnostic predictive tool for primary ciliary dyskinesia - PubMed
5点がカットオフとされていますが、内臓逆位を有さないPCDの場合、カットオフ値未満となる症例も少なくありません。
本邦の内臓逆位を有する頻度は約25%と低いことが知られていますので、その他の所見からPCDを疑う必要があります。
以下、私見も含みますが、PCDを疑うべき特徴についてまとめてみました。
PCDの多くの症例が
・幼少期からの副鼻腔炎もしくは中耳炎
・若年発症の気管支拡張症
を認めますので、まずはこの2つの所見がある患者さんにおいてはPCDを疑う必要があるかと思います。
基本的に上記2つを認める症例の場合は、一度はPCDのスクリーニングを検討すべきです。
また、PCDの多くが典型的な画像所見(中葉の気管支拡張と下葉の粒状影)を呈します。
若年の場合は下葉に病変を認めない患者さんもいますが、中葉に気管支拡張を認めない場合はPCDの可能性が下がります。
その他に、疑うべき徴候としては、
・不妊症(不妊治療歴)
不妊治療をされていれば、お子さんがいる患者さんも多くいらっしゃいます。
・原因不明の出生時呼吸不全
約半数の患者さんは出生時呼吸不全を認めません。
・マクロライドに不応
・蝶形骨洞もしくは前頭洞の低形成・無形成
・両親の近親婚のエピソード
・内臓逆位、内臓錯位
・先天性心疾患
があげられます。
PCDは2024年4月から指定難病の登録が開始されました。
同年7月には、外注の遺伝子検査が保険収載されています。
https://www.genetest.jp/test_search.html
(公益財団法人かずさDNA研究所かずさ遺伝子検査室)
外注の遺伝子検査のみでは診断のつかないPCDの患者さんもいますので、疑わしい場合は専門施設へご紹介ください。
学会員の先生方は既にご存知かとは思いますが、キャピリア® MAC抗体ELISAの安定した供給が維持できず、一部では測定困難となることが想定されているようです。
日本結核非結核性抗酸菌症学会、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本臨床微生物学会の4学会合同で文書が作成されており、学会ホームページで公開されております。
2025年8月12日
BRINSUPRI™(Brensocatib)が遂に、非嚢胞性線維症性気管支拡張症(non-cystic fibrosis bronchiectasis:NCFB)に対してFDAで承認されました。
気管支拡張症に対して初めて承認された薬剤になります。
今後、日本でも承認が予想されております。
▶Brensocatibの主要な臨床試験結果
・PhaseⅢ:ASPEN試験
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40267423/
・PhaseⅡ:WILLOW試験
本日は、世界NTMデーです!
本邦でも日本結核・非結核性抗酸菌症学会、NTMir、J-BREATHの合同で、疾患啓発が行われています。
群馬県の各施設でも啓発活動を進めていきましょう!
COPDは気管支拡張症の原因になることが知られており、EMBARCのレジストリー研究では、特発性、感染後についで頻度の高い疾患になります。
COPDと気管支拡張症の合併は、Bronchiectasis COPD overlap syndrome (BCOS)と評され、その基準としてROSE criteriaが知られています。
R:radiology
O:obstruction
S:symptoms
E:exposure
先日、東北大のグループによる本邦のCOPDにおける前向き観察研究の結果が、Respiratory investigationから報告されました。
こちらのコホートでは、COPDの15%に気管支拡張を認めております。
COPDにおける気管支拡張症の合併は死亡率や増悪率に影響を及ぼしませんでしたが、ROSE criteriaを満たす症例の5年死亡率が45.4%と高いことが示されています。
COPD+気管支拡張症の死亡リスク因子として、症状、Bronchiectasis severity index高値、緑膿菌感染が抽出されています。
Bronchiectasis severity indexは気管支拡張症の代表的な予後予測スコアリングシステムになります。
The bronchiectasis severity index. An international derivation and validation study - PubMed