お知らせ
気管支拡張症に対する抗炎症治療に関する、RCT(AIR-NET trial)が行われるようです。
そちらの試験デザイン・プロトコールがERJ openで発表されています。
投与される薬剤としては
・ドキシサイクリン
・ジスルフィラム(慢性アルコール中毒に効能あり)
・ジピリダモール(狭心症、心筋梗塞などに効能あり)
の3薬剤となっています。
いずれも本来の適応とは異なりますが、NETosis、酸化ストレス、MMP活性、炎症性サイトカインなどへの作用が報告されており、気管支拡張症における好中球性炎症を抑制する可能性が期待されています。
ドキシサイクリンは、BTSのGuidelineにおいて、
British Thoracic Society guideline for bronchiectasis in adults - PubMed
“Consider doxycycline as an alternative in patients intolerant of macrolides or in whom they are ineffective.”
(マクロライド長期療法に忍容性のない症例や効果不良の症例に検討)
と記載されています。
しかし、非マクロライド系薬の長期療法については、2025年の最新のERSのガイドラインでも「推奨しない」という記載になっており、エビデンスが不足している状況です。
今回紹介した論文中にも、
「マクロライドの代替として長期治療に適応外使用されることもあるが、その根拠となるエビデンスはない」
と記載されております。
ドキシサイクリンは比較的低用量でも好中球性炎症を抑制すると考えられているようですので、今回のRCTでもドキシサイクリン 100 mg 1日1回で投与されるデザインとなっているようです。
(注意:現時点で本邦においては保険適応外になりますので、一般的に推奨される治療ではありません)
気管支拡張症を主診断名として有し、かつ重症喘息を合併している症例に対するテゼペルマブ(抗TSLP抗体)の有効性に関する論文が、CHEST誌から報告されました。
【背景】
喘息と気管支拡張症の合併は決してまれではなく、欧州のEMBARCレジストリでは、気管支拡張症患者の約31%に喘息の合併が認められています。
喘息を合併する気管支拡張症では、増悪頻度が高く、より重症な経過をたどることが知られています。
一方、気管支拡張症では好中球性炎症を主体とする非Th2型炎症が関与することも多く、従来の生物学的製剤の効果が限定的な症例も存在します。
テゼペルマブはTSLPを阻害する薬剤であり、Type2炎症だけでなく、より上流の気道上皮由来サイトカインを標的とする点が特徴です。
そのため、喘息と気管支拡張症が重なる複雑な病態に対しても、有効性が期待されています。
【研究の概要】
本研究は、イタリアの8大学病院で行われた多施設観察研究です。
対象は、気管支拡張症を主診断名として有し、かつ重症喘息を合併している症例のうち、テゼペルマブが投与された22例です。
治療開始前、3カ月後、6カ月後に、呼吸機能、喘息コントロール、呼吸困難、喀痰量、増悪頻度などが評価されました。
患者の年齢中央値は65歳で、女性は41%でした。
ベースラインでは全例がICS/LABA/LAMAを含む吸入治療を受けており、41%が経口ステロイド、27%が長期アジスロマイシンを使用されていました。
また、36%は過去に他の生物学的製剤を使用されていました。
【主な結果】
テゼペルマブ投与後、臨床的に重要な改善が複数の指標で認められました。
●気管支拡張症増悪の頻度
治療前1年:3 (IQR 2-5.8)
治療中:0 (IQR 0-2)
●喀痰量
ベースライン:20 mL (IQR 5-45)
3か月後:7.5 mL (IQR 0-20)
6カ月後:0 mL (IQR 0-10)
●mMRC
(mMRCスコアが1以上の患者割合)
ベースライン:82%
3か月後:43%
6カ月後:41%
●%FEV1
ベースライン:62.0% (IQR 49.0-79.0)
3か月後:68.0% (IQR 56.0-85.0)
6カ月後:67.5% (IQR 53.0-80.5)
●ACTスコア
ベースライン:14点 (IQR 12-19)
3カ月後:20点 (IQR 17-24)
6カ月後:21点 (IQR 19-23)
【コメント】
Type 2-highの気管支拡張症や、喘息合併例の気管支拡張症に対する治療戦略は、いまだ確立されていません。
しかし、本論文のように、喘息に対する生物学的製剤が、喘息症状の改善に加えて、気管支拡張症増悪の抑制や喀痰量の減少にも寄与する可能性が報告されています。
小児の非嚢胞性線維症性気管支拡張症におけるアジスロマイシン長期療法の非盲検ランダム化中止試験の結果が, ERJ Open Researchで報告されています.
対象:
3-17歳のNCFBで, 週3回のAZM長期療法を6カ月以上実施している患者.
期間:
2015年4月~2019年12月
(ランダム化後6カ月間追跡)
症例数:
51例
(中止群:24例, 継続群:27例)
(感染後:55.6%, PCD:28.9%, 免疫不全:7.7%)
■結果
・AZM中止群で…
初回増悪までの期間が短い(p=0.03)
増悪を経験した患者の割合が高い傾向(58.3% vs. 33.3%, p=0.07)
・プロトコール遵守例でのCox解析では, AZM中止は初回増悪の独立した危険因子であった (aHR 3.74(95% CI 1.26–11.11))
本論文に関連してEditorialが掲載されており, そちらも大変興味深い内容となっています.
Goodbye seems to be the hardest word: long-term macrolide withdrawal in bronchiectasis - PubMed
本研究のLimitationとしては, 以下の点を指摘しています.
・症例数が51例程度
・オープンラベルであること
・追跡期間が6カ月と短い点
このEditorialでは今後の課題として
「症状, 増悪, バイオマーカーなどを含めて, どの状態なら中止可能かを明確にすること」
の重要性を指摘しています.
Editorialの筆者らは, 実際のClinical Practiceとして,
「少なくとも12か月は継続し, その後, 頻回増悪がなく, 今後の進行・悪化リスクも低い場合にのみ中止を検討する」
「中止後に増悪が増える可能性や、再開して長期継続する可能性について患者・介護者と共有したうえで意思決定すべき」
と記載していました.
マクロライド長期療法の中止のタイミングについては、成人例でも検討すべき重要なClinical questionと感じます.

