お知らせ
リファンピシンの併用によりクラリスロマイシンの血中濃度が低下することが報告されていますが, アジスロマイシンへの影響についてはこれまで検討が不十分でした.
今回はin vitroの研究ではなく, 実際に患者の血中濃度を解析した結果が, オランダのグループから報告されています.
研究デザイン
- オランダの単施設後ろ向き研究。
- アジスロマイシンTDMを受けた130例を解析。 59%がNTM-PD
- AUC₀–₆h、Cmax、トラフ値を評価。
- リファンピシン併用群と非併用群の比較に加え、同一患者内でリファンピシン使用時・中止後を比較した。
主な結果
- リファンピシン併用群は、非併用群よりアジスロマイシン投与量が多かった。
- ・7.9 vs 6.8 mg/kg/日
- それにもかかわらず、アジスロマイシン曝露量は大きく低下していた。
- ・AUC₀–₆h:0.90 vs 1.83 mg・h/L
- ・Cmax:0.22 vs 0.46 mg/L
- ・トラフ値:0.043 vs 0.13 mg/L
- Cmax 0.4 mg/L以上を達成した割合は、
- ・リファンピシン非併用群:68%
- ・リファンピシン併用群:25%
- であった。
同一患者内での比較
- 14例では、リファンピシン併用時と中止後の両方でTDMが実施された。
- リファンピシン併用により、
- ・AUCは約62%低下
- ・Cmaxは約58%低下
- ・トラフ値は約66%低下
- 個人差は大きいものの、アジスロマイシン曝露は概ね半分以下となった。
TDMの実臨床での影響
- 130例中54例(42%)で、TDM結果をもとに治療内容が変更された。
- 主な対応は、
- ・アジスロマイシン増量
- ・リファンピシン中止
- ・一部でクラリスロマイシンへの変更
- リファンピシン中止時には、クロファジミンが代替として導入されることが多かった。
- 介入後、アジスロマイシンのAUC、Cmax、トラフ値はいずれも上昇した。
注意点
- アジスロマイシン曝露量の低下が、培養陰性化率や臨床改善率の低下につながることは、本研究単独では証明されていません。
閉経後女性における気管支拡張症リスクと「生殖期間」の関連を検討した報告がありました。
対象:米国Women’s Health Initiativeに参加した閉経後女性 96,996人
追跡期間中央値: 16年
気管支拡張症の累積発症率: 2.7%
初経から閉経までの期間(reproductive lifespan)が短いほど、気管支拡張症リスクが高い傾向を認めました。
生殖期間が 40年以上の女性は、30年未満の女性と比べて気管支拡張症リスクが低いという結果でした。
全体:aHR 0.88
ホルモン補充療法なしでは aHR 0.78
一方で、ホルモン補充療法(HT)使用者ではこの関連は明確ではなく、HT使用自体が気管支拡張症リスク上昇と関連していました。
【コメント】
本研究は、閉経後女性で気管支拡張症が多い背景に、加齢だけでなく女性ホルモンや閉経時期などの生殖因子が関与している可能性を示した研究になります。
しかし、気管支拡張症の診断はMedicare claims dataに基づいており、因果関係を直接示すものではない点には注意が必要です。
女性ホルモンは肺非結核性抗酸菌症との関連性も報告されており、重要な研究テーマの1つです。
日本の全国レセプトデータベース(NDB)を用いて、2015〜2023年に診断された原発性線毛機能不全症(PCD)の疫学を検討した研究が報告されました。
■PCDの有病率
・2015年:100万人あたり3.8人
・2023年:100万人あたり10.2人
■PCDの罹患率
・2015年:100万人あたり0.8人
・2021年:100万人あたり2.2人
・2023年:100万人あたり1.2人
■新規PCD診断例(2015~2023年)
・1384例
■診断時年齢
・0-19歳:343例(25%)
・20-59歳:646例(47%)
・60-74歳:245例(18%)
・75歳以上:150例(11%)
■NTM合併
・全体:8%
・0-19歳:19/343例(6%)
・20-59歳:58/646例(9%)
・60-74歳:26/245例(11%)
・75歳以上:11/150例(7%)
■5年生存率
●男女別
・男性:89%
・女性:87%
●内臓逆位の有無
・逆位あり:87%
・逆位なし:89%
●年齢別
・0-19歳:98%
・20-59歳:95%
・60-74歳:75%
・75歳以上:56%
Suppleをみてみると、群馬県からは20例の患者さんが含まれていました。
気管支拡張症に対する抗炎症治療に関する、RCT(AIR-NET trial)が行われるようです。
そちらの試験デザイン・プロトコールがERJ openで発表されています。
投与される薬剤としては
・ドキシサイクリン
・ジスルフィラム(慢性アルコール中毒に効能あり)
・ジピリダモール(狭心症、心筋梗塞などに効能あり)
の3薬剤となっています。
いずれも本来の適応とは異なりますが、NETosis、酸化ストレス、MMP活性、炎症性サイトカインなどへの作用が報告されており、気管支拡張症における好中球性炎症を抑制する可能性が期待されています。
ドキシサイクリンは、BTSのGuidelineにおいて、
British Thoracic Society guideline for bronchiectasis in adults - PubMed
“Consider doxycycline as an alternative in patients intolerant of macrolides or in whom they are ineffective.”
(マクロライド長期療法に忍容性のない症例や効果不良の症例に検討)
と記載されています。
しかし、非マクロライド系薬の長期療法については、2025年の最新のERSのガイドラインでも「推奨しない」という記載になっており、エビデンスが不足している状況です。
今回紹介した論文中にも、
「マクロライドの代替として長期治療に適応外使用されることもあるが、その根拠となるエビデンスはない」
と記載されております。
ドキシサイクリンは比較的低用量でも好中球性炎症を抑制すると考えられているようですので、今回のRCTでもドキシサイクリン 100 mg 1日1回で投与されるデザインとなっているようです。
(注意:現時点で本邦においては保険適応外になりますので、一般的に推奨される治療ではありません)
気管支拡張症を主診断名として有し、かつ重症喘息を合併している症例に対するテゼペルマブ(抗TSLP抗体)の有効性に関する論文が、CHEST誌から報告されました。
【背景】
喘息と気管支拡張症の合併は決してまれではなく、欧州のEMBARCレジストリでは、気管支拡張症患者の約31%に喘息の合併が認められています。
喘息を合併する気管支拡張症では、増悪頻度が高く、より重症な経過をたどることが知られています。
一方、気管支拡張症では好中球性炎症を主体とする非Th2型炎症が関与することも多く、従来の生物学的製剤の効果が限定的な症例も存在します。
テゼペルマブはTSLPを阻害する薬剤であり、Type2炎症だけでなく、より上流の気道上皮由来サイトカインを標的とする点が特徴です。
そのため、喘息と気管支拡張症が重なる複雑な病態に対しても、有効性が期待されています。
【研究の概要】
本研究は、イタリアの8大学病院で行われた多施設観察研究です。
対象は、気管支拡張症を主診断名として有し、かつ重症喘息を合併している症例のうち、テゼペルマブが投与された22例です。
治療開始前、3カ月後、6カ月後に、呼吸機能、喘息コントロール、呼吸困難、喀痰量、増悪頻度などが評価されました。
患者の年齢中央値は65歳で、女性は41%でした。
ベースラインでは全例がICS/LABA/LAMAを含む吸入治療を受けており、41%が経口ステロイド、27%が長期アジスロマイシンを使用されていました。
また、36%は過去に他の生物学的製剤を使用されていました。
【主な結果】
テゼペルマブ投与後、臨床的に重要な改善が複数の指標で認められました。
●気管支拡張症増悪の頻度
治療前1年:3 (IQR 2-5.8)
治療中:0 (IQR 0-2)
●喀痰量
ベースライン:20 mL (IQR 5-45)
3か月後:7.5 mL (IQR 0-20)
6カ月後:0 mL (IQR 0-10)
●mMRC
(mMRCスコアが1以上の患者割合)
ベースライン:82%
3か月後:43%
6カ月後:41%
●%FEV1
ベースライン:62.0% (IQR 49.0-79.0)
3か月後:68.0% (IQR 56.0-85.0)
6カ月後:67.5% (IQR 53.0-80.5)
●ACTスコア
ベースライン:14点 (IQR 12-19)
3カ月後:20点 (IQR 17-24)
6カ月後:21点 (IQR 19-23)
【コメント】
Type 2-highの気管支拡張症や、喘息合併例の気管支拡張症に対する治療戦略は、いまだ確立されていません。
しかし、本論文のように、喘息に対する生物学的製剤が、喘息症状の改善に加えて、気管支拡張症増悪の抑制や喀痰量の減少にも寄与する可能性が報告されています。