お知らせ
気管支拡張症と気管支喘息は、しばしば同一患者に併存します。近年はこのような症例の臨床的特徴や予後を検討する報告が増えています。
1.気管支拡張症患者の約2~3割に喘息を合併する
気管支拡張症患者に喘息を合併する頻度は、報告によって異なりますが、おおむね 16~31%程度です。
- systematic review / meta-analysisでは 16%
(Coexistence of COPD or asthma in patients with bronchiectasis: a systematic review and meta-analysis - PubMed) - US Bronchiectasis Research Registryでは 29%
(Adult Patients With Bronchiectasis: A First Look at the US Bronchiectasis Research Registry - PubMed) - 欧州を中心とした大規模レジストリでは、16,963例中5,267例、31%に喘息を認めました
(Bronchiectasis and asthma: Data from the European Bronchiectasis Registry (EMBARC) - PubMed)
一方、喘息側からみても気管支拡張症は決してまれではありません。コントロール不良喘息398例を対象とした研究では、28.4%に気管支拡張症が認められました。また、重症喘息ではHRCTで最大約50%に気管支拡張を認めるとの報告もあります。
2.喘息+気管支拡張症(ABO)の臨床的特徴
ABO症例は、喘息単独例と比較して、
- Charlson comorbidity indexが高い
- FEV1、FVCが低い
- 喀痰好中球優位が多い
- 抗菌薬使用が多い
という特徴を示します。
一方、気管支拡張症単独例と比較すると、
- アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎が多い
- FEV1、FEV1/FVCが低い
- 血中好酸球、total IgEが高い
- 喀痰好酸球増多が多い
- ICS、全身性ステロイド、気管支拡張薬、LTRAの使用が多い
という、より喘息らしい特徴を有します。
(The Phenotypes of Asthma-Bronchiectasis Overlap: Clinical Characteristics and Outcomes - PubMed)
16,963例の気管支拡張症を解析したレジストリ研究では、喘息合併例は、
若年、女性、非喫煙者、BMIが高い、副鼻腔炎や鼻茸が多い
という特徴を示しました。喘息の合併頻度には地域差もあり、Northern Europeで特に高いことが報告されています。
(Bronchiectasis and asthma: Data from the European Bronchiectasis Registry (EMBARC) - PubMed)
3.ABOの複数の表現型
ABOは一様な集団ではなく、
① 気管支拡張症優位(ABO-B)
② 喘息優位(ABO-A)
③ 喘息+重症気管支拡張症(ABO-S)
という異なる表現型に分類できることが報告されています。
特に「喘息+重症気管支拡張症」の群では予後が不良でした。
気管支拡張症優位のABO-Bを基準とした2年間の再入院リスクは、
- ABO-A:HR 3.76(95% CI 1.12–12.60)
- ABO-S:HR 4.05(95% CI 1.14–14.36)
と上昇しています。
したがって、ABOを単純に「喘息+気管支拡張症」という一括りにするのではなく、どちらの病態が主体なのか、気管支拡張症がどの程度重症なのかを評価することが重要と考えられます。
(The Phenotypes of Asthma-Bronchiectasis Overlap: Clinical Characteristics and Outcomes - PubMed)
4.重症喘息+気管支拡張症の中の「Type 2-low」という表現型
日本からは、重症喘息に気管支拡張症を合併した症例を炎症性サブタイプ別に解析した全国調査があります。
この研究では、Type 2-lowの症例ほど緑膿菌が多く、増悪も多いことが示されています。つまり、喘息+気管支拡張症を考える際には、好酸球性炎症だけでなく、好中球性炎症や慢性感染を伴うType 2-low phenotypeにも注意が必要です。
(Nationwide survey of refractory asthma with bronchiectasis by inflammatory subtypes - PubMed)
5.喘息合併は気管支拡張症の増悪リスク?
気管支拡張症において喘息の存在が増悪と独立して関連し、
OR 2.60(95% CI 1.15–5.88)
と報告されています。
(Asthma and bronchiectasis exacerbation - PubMed)
喘息を合併した気管支拡張症においてICS使用が、
- 死亡:adjusted HR 0.78
- 入院:rate ratio 0.67
と、死亡および入院の低下と関連していました。
(Bronchiectasis and asthma: Data from the European Bronchiectasis Registry (EMBARC) - PubMed)
一方で、喘息合併がすべての予後不良と関連するわけではなく、緑膿菌保菌率に差を認めなかった報告や、死亡リスクが低かったとする報告もあります。
(Risk factors for Pseudomonas aeruginosa colonization in non-cystic fibrosis bronchiectasis and clinical implications - PubMed)
(Asthma as a co-morbidity and cause of bronchiectasis: data from the European Bronchiectasis Registry (EMBARC) | European Respiratory Society)
(Hospitalisations for bronchiectasis compared to COPD and asthma in the USA - PubMed)
6.喘息関連の気管支拡張症の画像的特徴
コントロール不良喘息患者を対象とした研究では、喘息関連の気管支拡張症は、
両側性、下葉優位、円筒状
であることが多いと報告されています。
7.上気道病変にも注目する
喘息と気管支拡張症をつなぐ病態として、慢性副鼻腔炎も重要です。
特に、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎+喘息では気管支拡張症の合併率が高いことが報告されています。
また、慢性副鼻腔炎を合併した喘息では、その後の気管支拡張症発症リスクとの関連も報告されています。
8.Aspergillus感作の頻度が高い
喘息と気管支拡張症を併存する患者では、Aspergillus特異的IgE陽性率が高いことも報告されています。この関連はABPAを除外しても認められており、ABPAそのものだけでなく、Aspergillus感作という視点も重要です。
まとめ
喘息と気管支拡張症は、想像以上に高頻度にオーバーラップします。
気管支拡張症患者の約2~3割に喘息が合併し、逆に重症・コントロール不良喘息では気管支拡張症を高頻度に認めます。
さらにABOは均一な疾患ではなく、好酸球性炎症を主体とする症例から、Type 2-low・好中球性炎症・慢性感染を特徴とする症例まで多様です。
「喘息患者だから喘息だけを見る」「気管支拡張症患者だから感染だけを見る」のではなく、両方の病態を評価することが重要と考えます。